信用金庫からIT業界へ転職はできる?選択肢の整理と考え方

信用金庫からIT業界への転職は、選択肢の一つとして実際に存在します。ただし、誰にでも簡単にできる、あるいは必ず成功するというものではありません。

信用金庫での実務経験の一部は活かせる場面がありますが、業界・職種未経験としての習得努力が別途必要になります。

また、「IT業界」とひとことで言っても中身は幅広く、社内SEやSIer、SES、自社開発エンジニアなど、検討できる方向は一つではありません。

筆者自身も信用金庫から情報通信業のITベンダーへ転職し、エンジニアとして働いた経験があります。

この記事では、その実体験をもとに、信用金庫からITに関わる仕事へ転職するときの選択肢や、実際に感じた不安・注意点を整理します。

信用金庫からIT業界への転職は可能か

結論から言うと、信用金庫からIT業界への転職は可能です。実際に、信用金庫での勤務からIT業界(情報通信業のITベンダー)へ転職し、エンジニアとして働いている人(筆者)がいます。

ただし「可能である」ことと「誰にでも簡単にできる」ことは別です。未経験の業界・職種への転職である以上、応募先を探し、選考を受け、入社後は新しい知識を習得していく過程が必要になります。

筆者自身がIT業界に関心を持ったきっかけは、特別なものではありませんでした。コロナ禍でIT業界自体が伸びているというニュースに触れたこと、また営業で使っていた社内システムに障害が起きた際に業務が大きく滞った経験から、「ITというものが仕事に与える影響の大きさ」を実感したことがきっかけです。

さらに、コロナ禍で施設見学ができず困っていた取引先の経営者に対して、YouTubeなどの動画媒体を使った紹介を提案したところ、喜んでもらえたことがありました。技術そのものを開発したわけではありませんが、ITに関係する手段を使って目の前の人の課題解決を手伝えたという実感を得たことが、「IT業界であれば、もっと多くの人の課題解決に関われるのではないか」と考えるきっかけになりました。

これは筆者個人の経験であり、同じきっかけがすべての人に当てはまるわけではありません。ただ、「今の仕事の中でITに関わる場面に触れたこと」が転職を考える入り口になるケースはある、という一例として紹介します。

信用金庫での経験はIT業界でどう見られるのか

信用金庫での業務は、担当する係によって内容が大きく異なります。参考として、筆者が実際に担当していた業務を時系列で挙げます。

・1年目前半:預金係、出納、ATMの操作案内、支店内外の清掃、備品運搬、伝票整理、コピー機のインク・用紙交換などの庶務
・1年目後半:融資係、個人ローンの受付、決算書の格付、電話での住宅ローン借り換え案内、電話での定期預金勧誘
・2年目:原付での顧客先訪問、融資営業、投資信託営業、定期預金営業、現金の引き出し受付・運搬、振込受付

このように、信用金庫の業務は事務作業から対面営業まで幅が広く、「何を担当していたか」によってIT業界に転職した際に活かせる観点も変わってきます。

筆者自身の実感としては、営業で培った「相手に配慮しながら話を組み立てるコミュニケーションの取り方」は、技術職に転職したあとも活かせたと感じています。

一方で、IT業界・エンジニア職は未経験だったため、業務で使うプログラミング言語や仕事の進め方に慣れるまでには苦労がありました。筆者の場合、「ある程度仕事に慣れた」と感じるまでに約1年半かかっています。

注意点として、これはあくまで筆者個人の実感です。「信用金庫出身者はIT企業から高く評価される」「営業出身者はエンジニアとして高く評価される」といった一般化はできません。金融機関出身者の経験が採用でどう評価されるかは応募先企業や職種によって異なるため、この記事では筆者個人の実感の範囲にとどめます。

ITに関わる転職先・職種の選択肢

「IT業界」という言葉は幅広く、転職先として検討できる方向はひとつではありません。代表的な選択肢としては、次のようなものが挙げられます。

  • 社内SE:自社の情報システムに関わる仕事とされ、勤務先や担当範囲によって具体的な業務内容には幅があります。ここで注意したいのは、社内SEは必ずしも「IT企業」に限った職種ではないという点です。信用金庫を含む金融機関やメーカーなど、IT企業以外の事業会社の情報システム部門で働く社内SEも存在します。そのため、「社内SE=IT業界の職種」と単純に捉えるのではなく、「ITに関わる働き方の一つ」として理解しておくと誤解が少なくなります。
  • SIer:顧客の情報システム開発を受託する企業・事業者です。
  • SES:客先のプロジェクト等でIT技術者が業務に携わる形態としてSESと呼ばれるものもあります。契約形態や働き方は企業・案件によって異なるため、応募時に確認が必要です。
  • FinTech企業:金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、金融サービスと情報技術を結びつけた動きを指すとされます。FinTech企業はこうした分野に関わるサービスを提供する企業です。
  • 自社開発エンジニア(事業会社):自社のサービスやプロダクトを開発する企業のエンジニア職です。

筆者自身は転職活動の際、社内SE、SES、自社開発企業などを含めて5社に応募しました。最終的に情報通信業のITベンダーに転職し、最初はプログラマーとして働き始めています。応募先を一つの職種・業態に絞らず、複数の選択肢を比較しながら検討したことは、筆者自身の経験としては役に立ちました。

それぞれの選択肢の詳しい職務内容や向き不向きについては、この記事では概要にとどめ、今後、個別のテーマごとの記事で詳しく扱います。

未経験からITへ転職するために必要な準備

未経験でITに進む場合、必要になる知識や準備は応募先や希望する職種によって異なります。学習方法や資格については、この記事では深掘りせず、別の記事で扱います。

参考として、筆者が転職活動の面接で実際に聞かれた質問は次のようなものでした。

・なぜ転職しようと思ったのか
・なぜIT業界なのか
・なぜその会社なのか

これらはいずれも、経歴や志望動機の一貫性を確認する質問だったと筆者は感じています。ただし、これは筆者が受けた選考での実例であり、すべての企業の選考で同様の質問がされるとは限りません。

信用金庫勤務者がIT業界への転職を考えるときの注意点

「未経験でも簡単に転職できる」「転職すれば必ず年収が上がる」といった情報を鵜呑みにすることは避けたほうがよいです。筆者自身も、転職を検討していた当時、いくつかの不安を抱えていました。

・信用金庫での経験が新しい業界でどう活かせるのか、当時はわからなかった。
・当時検討していた求人の中には、未経験者を採用対象としているものもあり、その中には条件によっては年収が100万円近く下がる可能性のある求人もあって悩んだ。
・技術的な話を面接でされた場合に、まったく理解できないのではないかと不安だった。
・インターネット上で「未経験からのIT転職はかなりきつい」といった情報を目にし、実際にやっていけるのか不安だった。
・「IT業界はブラック」という評判も目にし、転職してもまた早期に離職することになるのではと不安だった。

これらはあくまで筆者本人が当時検討していた求人・状況に基づく実感です。「未経験からのIT転職では一般的に年収が100万円下がる」という意味ではありません。年収の変化は応募先の業態・職種・条件によって大きく異なるため、一般論として断定はできません。

同様に、「IT業界はブラックだ」という評判についても、業界全体や個々の企業の実態を裏付ける一次情報がこの記事にはないため、断定的には扱いません。

筆者の実体験

筆者は信用金庫勤務(預金係・融資係・渉外を経験)から、情報通信業のITベンダーへ転職し、エンジニア(当初はプログラマー)として勤務した経験があります。転職活動では社内SE・SES・自社開発企業を含む5社に応募しました。

信用金庫での営業経験は、技術職に転職したあとのコミュニケーションの取り方に活かせたと感じている一方、業務で使う技術や仕事の進め方に慣れるまでは約1年半を要しました。

これらは筆者個人の経験であり、同じ結果を保証するものではありません。

信用金庫からITへの転職を考えている方へ

信用金庫からIT業界への転職を考える場合、まずは「IT業界へ行くかどうか」だけで判断するのではなく、社内SEやエンジニアなど、どのような仕事に関心があるのかを整理することが大切です。

筆者自身も、社内SE・SES・自社開発企業など複数の選択肢を検討したうえで、情報通信業のITベンダーへ転職しました。

今後このサイトでは、社内SEやエンジニアといった個別の職種や、信用金庫からの転職活動の進め方についても詳しく整理していきます。

転職活動を具体的に始めたい方向けには、信用金庫勤務者が転職エージェントを比較するときの考え方についても別の記事で扱う予定です。

参考情報

・厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア(受託開発)」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/312

・日本銀行「FinTech(フィンテック)とは何ですか?」
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/kess/i25.htm