「自分にはスキルがない」と感じていた転職前
転職活動を始めたころ、私は自分にスキルがあるとは思っていませんでした。
新卒の就職活動では自分の強みを「課題解決力」と話していましたが、社会人になってからは、学生時代に直面する課題と仕事で直面する課題は違うと感じるようになり、転職の時点では「課題解決力が自分の明確な強みだ」という確信は持てていませんでした。
結果的に転職活動では課題解決力をアピールすることになりましたが、自信満々に「これが自分の強みだ」と思っていたというより、面接で強みを説明するために、後で紹介する保育園での経験を整理して使ったという感覚に近いです。
信用金庫時代は、営業数字を十分に上げられず、上司から叱責を受けることもありました。自分では「これといった実績がない」と感じており、特に融資獲得の実績が少なく、転職で何をアピールすればいいのか不安でした。
少額の設備資金融資を1件獲得できた経験はありますが、1か月ほど通い続け、お願いする形で融資を受けてもらったという認識で、胸を張れる営業実績だとは当時も今も考えていません。
信用金庫で働く中で、できるようになったこと
華々しい実績はなかった一方で、日々の業務の中で少しずつできるようになったことはいくつかあります。
一つは、電話での対応です。定期預金の電話勧誘では、最初は緊張して何を話せばいいか分からず、頭が真っ白になることがありました。それが繰り返すうちに、徐々に自然に話せるようになりました。特別な訓練を受けたというより、単純に「慣れたのだと思う」というのが私自身の認識です。
もう一つは、決算書の読み方です。私の場合、ほんの少し読めるようになった、という程度のものです。売掛金などの項目について、過年度との推移や取引先の状況を見て、「不良資産に該当するかもしれない」と考え、気になる点を上司へ相談できるようになりました。
自分一人で判断して処理していたわけではなく、気づいたことを上司に相談できるようになった、というレベルの話です。
もう一つは、上司への報告の仕方です。最初は報告の順序がまとまらず、最後には「何を話しているのか」「上司に何をしてほしいのか」が伝わらなくなることがありました。そこで結論から話すことを意識するようになりました。
まだ話が長くなることはありましたが、少なくとも自分の意図を以前より伝えられるようになったと感じています。
いずれも、大きな成果と呼べるようなものではありません。ただ、こうした「できるようになったこと」の一つひとつが、後で紹介する強みの整理につながっていきました。
保育園への提案と、そこから生まれた自分の変化
信用金庫時代、担当していた保育園の園長から、コロナ禍で保護者向けの施設見学ができないという話を聞いたことがあります。そこで、施設内を動画で撮影してYouTubeなどで見てもらう方法を提案しました。
保護者から良い反応があり、園長にも感謝してもらえました。その後、園長が投資信託を購入することにもつながりました。この提案が融資の獲得につながったわけではありません。
この経験を通じて、私自身の中で顧客との向き合い方に変化がありました。
それ以前の私は、顧客と話すときに「融資の需要はないか」という基準で対話することを意識していました。保育園の経験以降は、「この顧客はいま何か困っていることはないか」という基準で話を聞き、課題があれば提案することを意識するようになりました。
この変化は、実績の大小そのものよりも、私にとって大きな意味を持っていると感じています。
転職活動で役立った「行動実績」の整理方法
転職活動を始めたころ、転職エージェントから経験の整理方法を教えてもらいました。これが私にとって非常に役立ちました。
整理の流れは次のようなものです。
- 意識したこと
- 行動
- 結果
- 自分の変化
私は営業実績そのものに自信がなかったため、保育園での経験をこの流れで整理し、面接で話せるようにしました。
この整理方法は、転職してから振り返って思いついた後付けの説明ではなく、実際の転職活動の当時に使っていたものです。
ただし、これは私が転職エージェントから教えてもらって役立った経験であり、「転職エージェントを使えば誰でも強みが見つかる」ということを言いたいわけではありません。
特別な成功体験がなくても、日常業務から探してよい
私の考えでは、店舗の実績や営業数字だけが「実績」ではありません。
自分が何かを意識して行動し、その結果が生まれ、その経験によって自分の考え方や行動が変わったのであれば、それも自分の中の「行動実績」として整理できると考えています。日常業務の中から探してもよいはずです。
仕事のほとんどは日常的なことの積み重ねです。特別な成功体験があるに越したことはありませんが、自分がどんな人間なのかを説明できるのであれば、日常的な経験から探してよいというのが私の考えです。
ただし、「確認しています」「電話対応しています」のように事実だけを述べても弱いというのが私の実感です。その先を説明できなければ、「だから何?」で終わってしまいます。
なぜそうしたのか、何を意識したのか、どう行動したのか、どんな結果になったのか、その結果自分がどう変わったのか、というところまで深掘りすることが必要だと感じています。
職務経歴書には書ききらず、面接で深掘りできるようにした
保育園の事例は職務経歴書にも書きましたが、詳しくすべてを書いたわけではありません。書類に書いた内容を面接でそのまま繰り返すと内容が重複してしまうため、面接で深掘りして話せる余地を残しておきました。
少なくとも私が受けた面接では、営業実績について聞かれませんでした。一方で、「仕事をしていて、どんな課題をどのように解決したのか」という内容は聞かれました。
保育園の事例については、なぜその提案をしたのか、自分で考えたのか、結果はどうだったのか、といったことを聞かれた記憶があります。ただしこれは私の記憶にもとづくものであり、面接ごとに必ず同じ質問がされるということではありません。
今振り返ると、結果の大きさよりも「なぜそうしたのか」を自分の言葉で深掘りして説明できる経験を選ぶ方がよいと私は考えています。そのほうが「自分はどんな人間なのか」を相手に伝えやすいと感じているためです。
ただし、これは私自身の転職経験にもとづく考え方であり、採用全般における絶対的な正解だと断定するものではありません。
信用金庫の専門知識・資格は転職先でどうだったか
私の場合、信用金庫で身につけた金融商品や融資に関する専門知識のほとんどは、現在のエンジニア業務では直接使っていません。同僚からローンやNISAについて相談され、知っている範囲で答えることがある程度です。
金融系の資格についても、エンジニア転職で使えるスキルだとは当時考えていませんでしたし、現在のエンジニア業務で役立っているとも感じていません。
ただし、これはあくまで私自身の転職先・仕事内容での話です。金融系のシステムに関わる仕事など、内容によっては状況が異なる可能性があるため、「金融資格はエンジニア転職では役に立たない」と一般化するつもりはありません。
一方で、確認を繰り返す習慣や、相手の立場や反応を考えて伝え方を選ぶ習慣など、信用金庫時代の行動そのものが転職後に結果的に役立ったと感じているものもあります。
この点は「信用金庫から異業種へ転職できる?私がエンジニア転職で感じた活かせる経験と足りなかったもの」で詳しく紹介しているため、ここでは触れる程度にとどめます。
転職前には分からなかったこと
私は今、「信用金庫で身につけたスキルを、そのまま転職先で使えるものにしよう」と無理に考える必要はあまりないと考えています。
理由は、実際に転職して働いてみなければ、何が使えるかは分からないからです。「結果的にこれが使えた」というものはありますが、転職前の段階で「このスキルはエンジニアでも絶対に使える」と断定的に結びつけることは難しいというのが私の実感です。
転職後、私は論理的思考力の必要性を強く感じるようになりました。アルゴリズムについても、自分で勉強する中や、転職後の仕事を通じて必要性を感じました。
今、転職前の自分に一つだけ準備を勧めるとしたら、この論理的思考力です。
論理的に考えることは、自分の行動実績を順序立てて整理することにもつながっていると私は感じています。ただし、「この行動実績の整理方法をやれば論理的思考力が身につく」ということまでは言えません。
「自分にはスキルがない」と感じたら、行動実績を整理してみる
自分には目立った実績がないと感じていても、それだけで転職先に話せるものがないとは限らないと私は考えています。
まずは日常業務の中から、「意識したこと→行動→結果→自分の変化」という流れで一つの経験を整理してみてください。
大きな成果である必要はありません。なぜそうしたのかを自分の言葉で説明できる経験であれば、日常業務の中から探して構わないはずです。
信用金庫時代の経験が転職後にどう活きたのかを詳しく知りたい方は「信用金庫から異業種へ転職できる?私がエンジニア転職で感じた活かせる経験と足りなかったもの」、
転職を考え始めたときの全体的な整理を知りたい方は「信用金庫から転職したい人へ|転職を考えたときに整理したこと」、
転職先の選び方を知りたい方は「信用金庫からの転職先はどう選ぶ?私がITエンジニアを選んだ理由と求人選びの基準」もあわせて読んでみてください。